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2024/03/29 23:57 |
TS小説『ひな祭り(後編)』

 翌朝。桃山家に一日の始まりを告げたのは、次女弥生の怒号だった。
「三月ィーッ! アンタでしょ、人形隠したのは!」
 引き締まった美しい脚がドアを蹴破り、ズカズカと三月の部屋に踏み込んできた。
 だが部屋の主はまだ寝ぼけており、脅威が迫っていることを全く認識していなかった。
 ゴソゴソと布団の中に頭まで潜り、
「ん~……? もうちょっと寝かせてよぉ……」
 と、布団の中からくぐもった声で訴える。
 だが朝っぱらから怒り心頭な弥生に通じるわけもない。
「何よ、こんな時だけ女の子みたいなカワイイ声出しちゃって! いいからまずは起きなさいッ!」
「ああっ、やめてって……!」
 懇願も空しく、弥生は力ずくでガバッと布団を引っぺがした。
「さあ、とぼけても無駄…………え?」
 怒りに充ち満ちていた弥生の瞳が、一瞬で力を失って点になった。驚きを通り越して、何が起こったか分からないという顔だ。
 布団の下から姿を現したのは、紛うことなき女の子だった。
 髪は肩を通り越して背中、下手をすれば腰の近くまで伸びている。ほっそりした体に男物のパジャマはダボダボで、今にも胸元がはだけてしまいそうだ。そしてその胸も大きく膨らみ、パッと見にもクッキリとした谷間が確認できる。
「え? 何なのコレ? どういうこと? 何で三月のベッドに知らない女の子が寝てんの……?」
「ほえ? 何わけの分かんないことを……」
 弥生が狼狽していると、問題の張本人がようやくちゃんと目を覚ました。ゆっくりと体を起こし、半開きの目をこすってあくびをする。
「ふあ~あ……! どうしたの弥生姉ちゃん、こんな朝早くから」
「アンタ、もしかして……三月なの?」
「は? 何を寝ぼけたこと言ってんのさ。当たり前じゃない」
 相手がそう答えると、弥生はゴクリと唾を飲み込み、不意に手を伸ばした。
 グイッ!
「あだだ! 痛いよ姉ちゃん、急に引っ張らないで――って、アレ? 何でボクこんなに髪が長いんだ?」
 視界に被さる長髪を手ですくう。それは一本一本が細くサラサラで、つかんでいないとあっという間に手のひらからこぼれ落ちてしまう。
 ムギュッ!
「ひゃうんっ!? ちょ、どこ触って――って、うええ!? 何これ!? 何でボクの胸がこんな大きくなってんの!?」
 弥生が双丘を力一杯に揉むと、本人もその感触に驚いて手を添えた。
 ズルッ!
「ちょっと!? パンツ脱がさないで――でええええッ!? アソコが、アソコがなくなってる!?」
 反射的に股間を隠そうとした手が、勢いそのまま太ももに挟み込むように突っ込まれた。
「何コレ!? これってもしかして、ボク女になっちゃってる!?」
「うーん、にわかに信じがたいけど……そういうことみたいね」
「そういうことみたいね、って……! 姉ちゃん、ボクに何かしたの!? 女装させるだけじゃ飽きたらず!」
 三月は錯乱状態で弥生の両腕にしがみついた。下半身は裸、上半身もパジャマが肩からずり落ちて胸がかなり露出してしまっているが、そんなことに構っていられる状況ではない。
「バカ言うんじゃないわよ! いくらなんでも男を女に変えるなんてできるわけないでしょ?」
「あ……うん、そうだよね。さすがの姉ちゃんでも、それは、ね」
「そうよ! できるもんならとっくの昔にやってるわよ!」
「……(ガクッ)」
 力強く断言する姉に、三月は静かに肩を落とした。
「で、でも、それじゃ一体何が原因で……?」
「さあねぇ……あっ人形!」
「人形?」
 三月が呆けていると、弥生はドカドカ足音を鳴らして机の方に向かった。
「コレよ、今朝なくなったひな人形! やっぱりアンタが隠してたのね!」
「え……えええ!?」
 思わず振り返ると、机の上にひな人形が乗っていた。昨晩確かに川へ投げ捨てたはずの女びなの人形が。
「そんなバカな! 何でこんなところに!?」
「しらばっくれんじゃないわよ! 自分で隠したんでしょ? アンタ、私たちをお嫁に行かせない気!?」
「そんなんじゃないよ! この人形は確かに夜中、わざわざ川まで行って捨ててきたはずなのに……あ!」
 そこまで言って、ハッとしたように口を押さえる。だがそれは既に手遅れだった。人形を持ち上げようとした弥生の手がピタリと止まる。
「……三月ちゃ~ん? 今何て言った? 川に捨てたとか何とか……」
「ちょっ、ちょっと待って! 話せば分か――」
「問答無用!」
 三月が身を翻して逃げようとするが、弥生の手の方が速かった。三月の背後から両脇に手をねじ込み、たわわな胸を鷲づかみにする。
「ひぃっ!? やっ、やめて!」
「やめるもんですか! お仕置きよ! アタシの気が済むまで揉みしだいてやる!」
「いやお願いだから! ちょっとこれ、シャレに、ならないっ……!」
「ほれほれ! どうだ、感じるのか? 感じちゃうのか~っ!?」
「あっ、あっ、ああんっ!?」
 弥生は力任せでなく、絶妙に力加減を変えながら三月の胸をこねくり回す。三月は立て続けに押し寄せる刺激に為す術もなく、ただただアゴを仰け反らせて喘ぐしかない。
 全身に力が入らず、次第に頭の中まで真っ白になって――
「はああぁぁぁっ……!」
 ガクッ
 三月は天を仰いでいた首をガックリと前に倒し、そのまま動かなくなってしまった。
「あ、あら? もしかしてイっちゃった? 胸だけで……」
 未知の刺激は三月には強烈すぎたらしく、慣れない感覚に脳があっさりと白旗を揚げてしまった。



「そういうわけで、三月、女になっちゃったみたい」
 朝の食卓。弥生が淡々と説明する横で、三月は泣きそうな顔になって俯いていた。長女の雛乃、そして母桃子の興味津々な視線が突き刺さってくる。
 父親が単身赴任中の桃山家は、三月が女になったことで完全な女所帯と化していた。
「へぇ……ビックリだけど、確かに顔つきとか、元の三月ちゃんの名残があるわね。困った時の様子なんか特にそっくり」
「そうね。しかもますます可愛くなっちゃったし」
「そんなのん気な……」
 姉も母も、突然のことに驚いてはいるが、訝しむこともなくあっさりと事実を受け入れていた。あまりの理解の早さが、三月には逆に心配になる。
「と、とにかく! 原因を突き止めて、どうすれば元に戻れるか考えないと――」
「え~!? いいじゃないこのままで」
「そうよ、もったいない。せっかくこんな可愛いコになったのに」
「あのねぇ……!」
 弟が妹になったことを心配しないどころか、逆に肯定的に受け止めている姉たち。考えてみれば長年嬉々として三月に女装をさせてきた二人だから、むしろこの状況は歓迎すべきものなのだろう。
 確かに今の三月は、女装が似合う男子だった頃よりさらに美人度を増していた。ツヤのある真っ直ぐサラサラな黒髪と、透き通るような真っ白の肌。その色合いの対比はまるで日本人形を思わせる容姿だ。
 元々の大人しい性格もルックスにピッタリとマッチし、清楚な少女の雰囲気を存分に醸し出していた。
 だがもちろん、本人はそんなものを望んでなどいない。
「何考えてんのさ。こっちは急に性別が変わって一大事なんだよ!? 母さんも何か言ってやってよ」
「あらぁ、いいじゃない。私は嬉しいわ。母さんホントは女の子が欲しかったの」
 ズルッ!
「ひ、酷いよ母さん……!」
 生みの母にまで男の自分を否定され、三月はまたガックリとうなだれた。
「えー、何それ母さん。女の子が欲しかったって、アタシたちの立場は?」
 母の言葉に軽く口を尖らせる弥生。すると桃子は困ったように、若干苦笑いを浮かべて答えた。
「ああ、ごめんなさい。ちょっと言い方がマズかったかしらね。母さんホントは女の子しか欲しくなかったの」
「それはもっと酷すぎるよ母さーんッ!!」
 トドメの一撃を食らい、三月の心は真っ暗な深海の淵まで沈められた。
「それにしても本当に、何が原因なのかしらね?」
「そうねぇ。ちゃんと把握しておかないと、また偶然元に戻っちゃう危険性もあるし」
「……」
 最早ツッコむ気力も失せる三月。どうやら姉たちの中では、このまま元に戻さないことは決定事項のようだ。
「そういえば三月、アンタおひな様を川に捨てたとか言ってたよね?」
「え? あ、ああ、うん。そうしたつもりだったんだけど……」
 昨晩、確かに三月はひな人形を川へ投げ捨てた。だが何故か翌朝、それは三月の部屋へと舞い戻っていた。
「ということは、やっぱり人形を粗末にしたバチが当たったんじゃないの」
「かもしれないわね。うちの人形は、母さんのおばあちゃんの代から伝わってきた古いものだから」
「だからってそんなこと……いや、ありえなくもないか……う~ん」
 捨てられたはずの川からワープしてきたくらいだから、それくらい考えられないことでもないのかもしれない。
 頭を抱えて唸る三月。と、ふと視線を上げると、
「あれっ、もうこんな時間!? ヤバい、遅刻しちゃう!」
 時計が目に入った途端、三月は慌てて立ち上がった。その拍子にまたパジャマが肩からずり落ちそうになり、反射的に上げる。
 そのまま自分の部屋へ戻ろうとしたが、二、三歩進んだところで後ろからグイッと襟首をつかまれた。
「うぐっ。何すんの雛乃姉ちゃん?」
「ダメよ三月ちゃん。その姿のまま学校へ行くつもり?」
「へ? ……あ」
 指摘されて、自分が女の体になっていることを思い出す。確かにこのまま登校するのは問題だ。
 大きな胸は何とかサラシでも巻いてごまかすにしても、学生服は間違いなくブカブカだろう。何より腰まで伸びた長い髪は、バッサリ切りでもしない限り隠しようがない。
「そっか、そうだね……とりあえず今日は学校休むとして――」
「大丈夫よ三月ちゃん」
 雛乃はそう言うと、そそくさと自室へ戻る。そして再び現れた時には、
「ハイ。ちゃんとコレを着ていけば大丈夫っ」
「そ、それは昨日の……」
 雛乃は女子用の制服を持ってきた。昨日のひな祭りで三月の女装に使われた、弥生のお下がりのブレザーとスカートである。
「今日まとめて片付けるつもりだったんだけど、ちょうど良かったわ」
「大事に使いなさいよ、アタシのなんだから」
「早速女子の格好で学校行くって、おかしいと思わないのかーッ!?」



 結局昨日の女装と同様、嫌がる三月を姉二人で無理やり着替えさせた。今回はご丁寧に女物の下着まで完璧に。
 強引に送り出された三月は、通学路から外れた脇道をトボトボ歩いていた。
「冗談じゃないよ、こんな格好でいきなり学校行ったら、クラス中が大騒ぎになっちゃうよ」
 遅刻寸前というのに重たい足取り。スカートを履かされた段階で、もうハナから学校へ行く気などなかった。
「うう~、スカートがスースーして気持ち悪いよ……胸は重いし、髪は引っ張られるようだし……」
 そのまま足の向くに任せて、あてもなく歩いていると。
「……ん?」
 通りの向こうから、息を切らして全力疾走する女の子の姿が見えた。髪が乱れるのもスカートがめくれるのもいとわず、ただただ前だけを見て走っている。
 その姿が徐々にこちらに向かって近づいてくると、三月はそれが見慣れた顔であることに気付いた。
「ゲッ、美々ちゃん!?」
 思わず声が裏返る。三月の彼女の春日美々が、一心不乱にこちらへ駆けてきた。
 咄嗟に逃げようとも思ったが、
(あ、いや、向こうはボクのこと分からないはずだし……)
 と気を取り直し、他人のふりをしてやり過ごそうとする。
 だが美々は止まらなかった。
「三月君ーッ!!」
「ぐはァッ!?」
 まさかの一撃だった。彼女は三月の顔を間近に確認するやいなや、間髪入れずに飛びついてきたのだ。急に全体重をかけられた三月は、美々もろともあっさりと後方へ倒れ込んだ。
「ごっ、ごめんなさい! 私、いてもたってもいられなくて、つい……」
「ああ、いや、いいんだけど……」
 ゆっくり体を起こし、美々の手を取る三月。美々は引っ張られて立ち上がると、まじまじと三月の姿を見つめた。
「弥生さんから、三月君が女の子になっちゃったって聞いて、慌てて走ってきたんだけど……」
「姉ちゃんめ、何で速攻でバラすんだよ……! っていうか美々ちゃんも、何でそんなこと真に受けるの……?」
 三月が女になったというのは一応事実に間違いない。だが普通の神経の持ち主であれば、まず頭から信じられるような話ではないだろう。
 だが美々は疑うことなく、大急ぎで恋人の一大事に駆けつけたのだった。
「でもまァ、聞いてるんなら話は早いよ。ひな人形のバチだか何だか知らないけど、ボクは……」
「素敵……!」
「は?」
 よくよく見ると、こちらを見つめる美々の目つきが変化していた。最初は驚きに目を丸くしていたのが、徐々に目の色が輝き始め、視線が熱を帯びていく。
「とっても可愛いよ、三月君! いやもう三月ちゃん! 女装してた時も良かったけど、ホンモノの女の子になったらより一層可愛い! もう女子の中にいても一番目を引くくらい!」
「……美々ちゃんまでもか」
 昨日の今日で、ある程度予想はついたことであったが、やはり美々も三月の変貌ぶりを絶賛してきた。それだけ誰の目から見ても抜群の容姿になったということなのだろうが、それは本人の気持ちとは何の関係もない。
「やっぱり、美々ちゃんもボクがずっと女のままの方がいいとか思うの?」
「え?」
「みんなそうだ。女装させられてた時から可愛い可愛いって、ボクの気持ちなんかお構いなしで……。いくらそんなこと言われたって、男のボクが嬉しいわけないじゃないか」
 三月は今にも涙がこぼれそうなのをこらえて、わなわなと小さく体を震わせていた。
「もしボクがこのまま元に戻らなかったら、美々ちゃんはどうするの? ボクのこと可愛いって言いながら、別の男と付き合――んむぅ!?」
 恋人の美々への厳しい口調。だが言葉は終わりを待たずして遮られた。
 三月の口が、美々の口によって塞がれてしまったから。
「――ぷはあっ! みっ、美々ちゃん……!」
 不意打ちで訪れた、女同士のキス。三月はほのかに甘い匂いにクラクラしながら、何とか前を見据えた。
「確かに男の子に向かって可愛いっていうのは褒め言葉じゃなかったかもしれない。それで嫌な思いをさせちゃったなら謝る。ごめんなさい」
 そう言って一度、深く頭を下げる美々。だが再び頭を上げると、その目は真剣な眼差しで三月を捉えた。
「でも、それは私の本当の気持ちなの! 昨日も言ったでしょ、からかってるんじゃなくてホントに可愛らしくて素敵だって! 好きな人のことを素敵だと思うのは、間違ってること?」
「あ……いや……」
「私は三月ちゃんが男に戻れなくたって、三月ちゃんを見捨てたりしないよ。男とか女とか関係ない、私は桃山三月という人が好きなの!」
「美々ちゃん……!」
 必死で引き締めていた涙腺が、途端に緩んだ。その引き金は先ほどまでの怒りや悔しさといった感情ではない。自分の一番好きな人が、純粋に自分を思ってくれることへの嬉しさだった。
 自然に、どちらからともなく顔が近づいていく。さっきは美々が勢い任せでしたキス。だが今度は――
「ハッ!」
 美々が閉じかけた目をパッと開き、慌てて時計を見る。
「ヤバいよ! もう遅刻しちゃう!」
「学校行く気あったのか、美々ちゃん……」
 最初からサボる気満々だった三月は、最早学校のことなどすっかり忘れてしまっていた。だが美々はそんな三月の手を取り、すぐさま駆け出した。
「さっ、行こ! 三月ちゃん!」
「わわっ、ちょっと待って!」
 女の体になった三月は、腕力も美々とほぼ対等になってしまっている。力ずくで引っ張られるのを簡単には止められない。
「ダメだよ美々ちゃん、こんな格好じゃ……!」
「その格好だからいいんじゃない。ちゃんと女子の制服着てるから、誰にも文句言われないよ!」
「いやそうじゃなくて、男だったボクがいきなり女になっちゃってるんだから……!」
「言ったでしょ、男とか女とか関係ないって! 三月ちゃんは三月ちゃん!」
 三月が何を言っても、美々の自信満々な表情が揺らぐことはない。それを見て、三月も途中から文句を言うのを諦めた。
 むしろ、これから何がどうなるか分からない中で、これほど心強いパートナーもいない。この先美々の尻に敷かれるであろう日々を想像して、三月は初めてちょっとだけ笑った。



 それから時は流れて、14年後――



「三月ちゃ~ん。ケーキ買ってきたよ~」
「ありがと、美々ちゃん。一緒に食べよっ」
 テーブルを挟んで、二人の女性が顔をほころばせる。
 桃山三月と春日美々。成長して社会人となった二人は、同じマンションで暮らしていた。
「今年もひな祭りかぁ。早いもんだね。中学のあの時を思い出すよ」
「ボクら今28歳だから……そっか、ちょうど14年ずつになったのか」
 14年ずつ。すなわち、三月が男として生きてきた中学二年までの14年と、それからの14年。
 あれから三月は流されるままに美々と同じ女子高校、同じ女子短大へ進み、すっかり女の世界に溶け込まされてしまった。男に戻る兆しが見えないどころか、むしろ年月を経るにつれてどんどん女らしさが身についていく。
 ついには短大卒業とともにOLとして就職までしてしまった。
「三月ちゃんは、やっぱり今でも男に戻りたい?」
「う~ん、もうとっくに取り返しのつかないところまで来ちゃってるからなぁ……。時々自分が男だったこと忘れちゃうくらいだし。むしろ今急に男に戻ったら、そっちの方が大変なことになりそう」
 三月が苦笑いしながらケーキを頬張る。
 いつの頃からか、三月はもう男に戻りたいという気持ちをなくしていた。それはこの14年間片時も離れず一緒にいた美々の存在ゆえだった。三月が元に戻れなくても見捨てることなく、新しい彼氏を作ることもなかった。二人の関係は、三月が男だった頃からずっと変わっていない。
「私たちももうアラサーだね。最近親にちょくちょく言われるよ、まだ結婚しないのかって」
「あ、あはは……ボクのせいで……。ゴメンね」
「んーん、ちっともゴメンじゃないよ。私は今のままで幸せだもん」
 美々はスッと立ち上がり、三月の側に体を寄せてきた。
「ひな人形を早く片付けないと結婚できなくなるって、ある意味本当だったのかな……? ボクたち同性になっちゃったから、どうやっても結婚できない……」
「カナダとか、外国に住むって手もあるよ?」
「いや、さすがにそこまでは……」
「うふふ。私、結婚なんてできなくてもいいの。私には三月ちゃんさえいればいいんだから」
「美々ちゃん……ボクもだよ。愛してる」
 自然と重なる唇。互いに食べていたケーキの匂いが混じり合い、そのキスはいつにも増して甘い味がした。



<むつき>
 ふい~っ。やっと完成したですよ!

63768640.jpg<シノブ>
 お疲れさん。





<むつき>
 この話、本当はひな祭りの日にまとめてアップしたいと思って準備してたんですけど……どうあがいても長くなってしまって、3月3日に全部載せるのは間に合わなくて。仕方ないんで3日は書き上がってる分だけ「前編」という形で出しまして、今日ようやく残りを出せました。

f8301cd5.jpg<シノブ>
 この調子で少しずつ、ブログとしての体裁を整えていきたいところだね。

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2010/03/06 21:38 | Comments(0) | TrackBack() | 自作TS小説

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